2010年9月1日水曜日

認知症とは

人間の知能や機能の司令塔である「脳」。
この脳の正常な働きが、生まれてから今まで生きてきた中つまり後天的に起きた様々な病気などによって脳の機能が低下し続けている状態のことを言います。
先天的つまり生まれ持って知能に障害をきたしていることを「知的障害」と言います。
これに対し後天的に脳に障害を起こしていることを「認知症」と言います。

一昔前までは日本では認知症のことを「痴呆」と呼んでいました。
これを2004年に厚生労働省が現在の呼び名である「認知症」に変更しました。
この行政の指示によって、老人福祉施設や医療現場では痴呆を認知症と名称変更したのです。

認知症の意味は知能が低下した状態ですが、実際に医学的にいうと脳の記憶や見識に障害があり、さらに人格障害などを起こす症状を指します。
年老いたことによって記憶力が薄れる、ぼけるなどの症状を認知症とは言いません。
病的に脳の機能が低下し続けることのみを指しています。
頭部にケガをおったことによって知能が低下したらそれは認知症と言います。
判断能力が低下したことなどだけでは認知症にはなりません。

しかしながら認知症は後天的な影響から脳の機能が低下するため、高齢者に多く見られるのも事実です。
高齢者が認知症を患うと身体的にも衰えることがあり、1人では日常生活を送れなくなってしまうことも珍しくありません。
このようなときは家族や親族などによる心からの献身的な介護が必要となります。


症状

認知症の症状には様々なものがあります。
認知症の症状を大きく分けると4つに分類することができます。

1つ目は「知的能力の低下」です。
物忘れがひどくなる健忘の症状がでます。
日時の感覚がなくなったり、場所や人がわからなくなったりする見当識障害を起こします。
考えることや理解する思考力が弱くなります。
物事を判断したり見極めたりする力が弱くなり人違いなどを起こしてしまう認知障害を起こします。

2つ目は「心の症状」と「行動障害」です。
夜になると興奮状態になって行動がおかしくなる夜間せん妄を起こします。
夜眠ることができなくなり不眠状態になります。
そこにあるはずのないものが見える幻覚症状を起こします。
ありえないものを信じる妄想を起こします。
気分がつねに落ち込む抑うつ状態になります。

行動障害としてはあちこち勝手に歩き回って徘徊します。
ささいなことで起こって手を出すようになり暴力的になります。
食べられないものなので本来は口にいれないのに、あえて口に入れて食べようとする異色行動がみられます。
便をいじることもあります。

3つ目は「日常生活の低下」です。
日常生活において基本的なこと、食事をする、排泄、入浴、着替えをするなどの行為が自分ひとりではできなくなります。

4つ目は「身体障害」です。
歩行が困難になる歩行障害が現れます。
食べ物を飲み込む力が弱くなりむせる嚥下障害を起こします。
失禁したり便が出にくくなったりする膀胱直腸障害を起こします。

これらの症状の出方には個人差があります。


危険因子

現在日本国内において認知症にかかっている人は65歳以上の高齢者で3%~8%になります。
今後の高齢化社会においてさらにこのパーセンテージはあがり10%になる日も近いと言われています。
認知症の発病率は75歳以上になると急激に高くなります。
このようなことからも認知症の最大の危険因子は「年齢」であると言えます。
認知症の中でもアルツハイマー型のタイプは特に年齢と共に発病率が高くなることがわかっています。

家族歴も大きく関係しています。
自分の両親どちらかが認知症をわずらっていれば、その子供が認知症を発病する確立は通常よりも10%~30%も高くなります。
また親が早期に発症している場合、その子供も早期に発症する可能性が高くなり50歳台での発症率もかなり高くなります。
これらは遺伝因子によるものと考えられています。

他にも高血圧の人が高血圧治療の際に使われる血圧降下剤を服用することで脳の中が酸欠状態になって脳細胞が減少することで発病することがあります。
この他にも糖尿病や高コレステロール血症などの病気によって認知症が発病する危険性も高くなります。
喫煙も認知症の発病に大きく影響があるため、受動喫煙している場合でもその発病率は通常よりも高くなります。
受動喫煙しているだけでも30年間の間で認知症の発病率が3割もあがっているそうです。

認知症になる危険因子としてはこの他にも様々ありますが、大きく影響を与えているのは以上のようなことが挙げられます。


原因

病気によって認知症を発症するケースは多いです。
原因となる病気として主なものに、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症があります。
さらにこの2つの病気を混合したケースもあります。
これらの病気が認知症の約8割から9割を占めています。

アルツハイマー型認知症とは、脳細胞の性質が変わったり消失したりすることによって脳が縮んでしまい起こるものです。
脳血管性認知症とは、脳梗塞や脳出血など脳内血管に異常によって起こるものです。

それぞれの症状を比較すると、アルツハイマー型では初期段階で認知症であるという自覚がほとんどないのに対して、脳血管性認知症の場合は初期段階ですでに自覚症状があります。
症状の進行状況は、アルツハイマー型ではゆっくりと進行していくのに対して、脳血管性の場合症状が良くなったり悪くなったりして進んでいきます。
また脳血管性の場合は手足に麻痺やしびれなどの神経症状がありますが、アルツハイマー型の初期段階にはほとんどありません。
持病と認知症との関係を見ると、アルツハイマー型は持病とはほとんど関係ありませんが、脳血管性の場合は高血圧や糖尿病などの持病と関係していることが多いです。

それぞれの認知症の特徴としては、アルツハイマー型では落ち着きが無くなったり、深刻さがなかったりします。
脳血管性の場合、情緒不安定になりほんのささいなことで怒ったり泣いたりします。
アルツハイマー型では全般的に能力が低下しますが、脳血管性では部分的に低下するにとどまります。
以上のように認知症の違いを一般的な傾向として挙げてみました。


認知症と間違えやすい病気

年をとって少し物忘れがひどくなってきた、ぼけてきたからといってそれがすべて認知症というわけではありません。
認知症と似たような症状の病気や状態は他にもあります。

例えば「うつ病」です。
気分が落ち込んで暗くなり元気がなくなっていくため、認知症と間違えやすい病気です。
うつ病の場合は抗うつ剤によってある程度症状を改善することができます。

他にも耳や目の病気が考えられます。
耳が聞こえにくくなったり、目が見えにくくなったりすると外界からの情報が減ってしまいそのために反応がにぶくなり認知症と見えることがあります。
難聴や白内障などの視力障害が考えられます。
このような場合は医療機関を受診して、薬を服用して治療を進めていくか補聴器などを利用することによって症状が改善してくると思います。

薬の飲み方にも注意が必要です。
年をとっていろんな病気にかかるようになって、複数の病院をかけもちして薬もそれぞれ並行して飲まなければならないこともでてくると思います。
この薬の飲み方を間違えてしまい飲みすぎてしまうと、ボーっとした状態になり周囲からみると認知症を患っているように見えることがあります。

認知症の症状の特徴でもある物忘れですが、認知症によるものとそうでないものの見分け方を紹介します。
普通に物忘れをした場合、自分が物忘れしたことを覚えているものです。
ところが認知症の場合、物忘れしたことさえ自覚していないことがほとんどです。
また生活体験している全てのことを忘れます。
認知症による物忘れの場合、この症状はどんどん進行していきます。
普通の物忘れでは進行しません。
次第に日常生活も送れなくなっていくことが特徴です。
普通の物忘れでは日常生活に支障はありません。


アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、認知症の疾患の中で一番多いタイプになります。
認知症のはっきりとした原因はまだわかっていません。
わかっている範囲で答えるならば、脳の中で様々な変化が起こってそれにより脳の中にある神経細胞が急激に減ることで脳が萎縮して起こるものとされています。
脳が萎縮することで、その人の人格を崩壊したり、知能低下を起こしたりします。
これが認知症と呼ばれる症状になります。

アルツハイマー型の特徴としては、物忘れなどの症状から始まりゆっくりと進行していくことにあります。
過去の古い記憶についてはよく覚えているのですが、ほんの少し前の出来事、最近の出来事について忘れっぽくなるのが特徴です。
ですから毎日同じことを何度も聞いたり話したりします。
抑うつや妄想から発症することもあります。
運動麻痺や失禁、歩行障害など重度の症状は初期段階では起こりませんが徐々に発症していきます。

認知症であることを確認する方法として脳のCTをとるとかMRIをとるとわかると言いますが、これらの画像診断をしても正常値よりも若干脳が萎縮している程度の結果しかでません。
はっきりと認知症であることがわかるわけではありません。
あくまでも脳の萎縮程度を知るだけの目安になります。
アルツハイマー型認知症は発症年齢によって言い方や捉え方が違います。
65歳未満の若年性発症のタイプをアルツハイマー型と言います。
そして65歳以上の老年期に発症するタイプをアルツハイマー型老年期認知症と呼びます。


アルツハイマー型認知症2

アルツハイマー型の症状を段階ごとに分けてみました。

アルツハイマー型認知症の軽度状態では、時間や曜日の感覚が不確かになる見当識障害が起こります。
日常生活の中で家事をしていて調理に必要なものを買い忘れたり支払いを間違えたりといった些細な間違いも起こします。

アルツハイマー型認知症の中等度状態では、普段行きなれていない場所に買い物に行くと迷子になるなど場所に関しての見当識障害が起こります。
こうなると買い物も一人ではでかけられなくなります。
季節に合わせて洋服を着ることや上下のバランスを考えてコーディネイトすることなどができなくなります。
突然大声をあげるなどの感情障害がみられ多動になります。
睡眠障害も起きてしっかりと眠ることができなくなります。

高度状態になると、家族や子供の顔もわからなくなり人物の見当識障害が起こります。
家の中の間取りもわからなくなり、トイレの場所さえもわからなくなり一人ではいけなくなります。
ボタンをかけることもリボンを結ぶこともできず着替えに介助が必要になります。
お風呂も自分一人ではうまく洗えなくなり、お湯の温度調整もできなくなります。
トイレも自分できちんと拭くこともできなくなり、身なりを正すこともできなくなります。
失禁したり便をもらしたりすることもあります。
言葉も単語で話すようになり文章を話すことが困難になります。
階段の上り下りがひとりではできない、歩行はゆっくりとしかできないなどの歩行障害も見られます。


脳の中では

脳の中ではどのようなことが起きているのでしょうか。
アルツハイマー型認知症の場合で脳の変化を見てみましょう。

まず大脳皮質に萎縮がみられるようになります。
通常は成人の脳で1,400gほどある脳の重さが、認知症を発症して10年ほど経過すると900g以下になってしまいます。
MRIで画像診断すると、正常な脳よりも大脳が小さくなっていることがひと目でわかります。
特に海馬やその周辺の萎縮に関しては進行性のものが多く重要です。

神経伝達物質にも異常がみられるようになります。
これはアルツハイマー型認知症を発症するのに大きく影響していると言われています。
認知症を発症すると、様々な神経伝達物質が減少します。
特に記憶に関係しているアセチルコリンという神経伝達物質の減少が大きいとされています。
他にもドーパミンやグルタミン酸、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質が減少するとされています。
こうして多くの神経伝達物質が減少することで、脳の記憶部分の機能が低下して認知症の様々な症状を発症するのです。

他にも老人斑や神経原線維変化したり神経細胞の脱落がみられたりするようになります。
脳の中を顕微鏡で見てみると、神経細胞や細胞間にシミのようなもの老人斑や糸くずのような神経原線維が見られます。
この老人斑や神経原線維が増えてくることで神経細胞が減ってしまいます。

以上のようなことがアルツハイマー型認知症の脳の中で起きています。


脳血管性認知症

認知症の中でもアルツハイマー型ともうひとつ多く見られるタイプがこの「脳血管性認知症」です。
脳の中にある血管が病気などのなんらかの原因によって破れたり、詰まったりすることで脳の働きを悪くしてしまいその結果認知症を発症するケースがあります。
このようなケースを脳血管性認知症と呼びます。

脳の中に梗塞がある場合、大きいものや小さくて数が多いものなど様々なケースがあります。
これらの様々な原因によって発症します。
例えば脳内全体の血流が低下したことによってできる場合があります。
脳卒中になって突然そのあとから認知症の症状が現れたり、階段式に徐々に症状が現れてきたりすることがあります。

脳血管性認知症の場合は、部分的に障害を起こしている場合が多く、その他の部位は低下せず能力的には比較的大丈夫であることが多いです。
部分的に障害を起こすため、人の名前は思い出せない人格障害を起こしたとしても記憶ははっきりしていて記憶障害は起こしていないなど正常さを保っているのが特徴です。

持病として高血圧や高脂血症、糖尿病、動脈硬化などの心疾患がありまた喫煙経験があると発症しやすくなります。
症状としては早期段階で、歩行障害や手足に麻痺がでたり、しびれがでたり、ろれつが回らなかったり、転びやすくなったりすることがあります。
他にも感情をコントロールできないで、抑うつ状態になったり感情失禁したりすることがあります。
これらの症状が早期に見られることが脳血管性認知症の特徴です。


脳血管性認知症2

脳血管性認知症になる原因の約8割が脳梗塞の多発によるものです。
脳の血管に障害が起きることで脳の中の血流量や代謝量が減ってきます。
脳梗塞の程度や範囲によって、認知症の程度に影響がでることがわかっています。

脳血管性認知症の特徴として、障害が起きた部位ごとによって症状にむらがあることが挙げられます。
部位ごとにめまいやしびれが起きたり、言語障害が起きたり、知的能力が低下したりします。
そのため記憶力が激しく低下していても、判断力はしっかりしていて理解力もあるというまだらに認知症症状がでやすいです。
他にも意欲低下による自発性の低下、歩行障害、失禁、頻尿、麻痺、構音、嚥下障害などの症状があります。
症状も日によってその激しさが違います。

脳血管性認知症の場合、予防することができます。
何よりも脳梗塞にならないようにすることが一番です。
そのためにはCTやMRIなどで定期的に検査して早い段階でかくれ脳梗塞を見つけて治療することが必要です。
また脳梗塞のまえぶれ症状として運動麻痺や言語障害などが起きることがありますが、1日もしないうちに症状が治まってしまうことがあります。
このとき治ったからと安心しないで、必ず医療機関を受診するようにしましょう。
他にも高血圧の人は高血圧を治すこと、糖尿病や不整脈の人も受診してすぐに治すこと。
日常生活においてはタバコはやめること、アルコールは適量飲むこと、食事は塩分や脂肪分は控えめにすること。
運動をすることなどが予防策として挙げられます。


そのほかの認知症

認知症の患者さんは年々増え続けています。
その中で3大認知症と呼ばれるものが、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症とそしてもう一つがこの病気です。
脳の後ろの方で起きる病気「レビー小体型認知症」です。
これは変性性認知症です。
日本で発見された認知症ですが、あまり知られていないのが現状です。
この種類の認知症の中ではアルツハイマー型の次に多い病気です。
頻度が多い病気で日本では認知症の人の約2割がこの病気です。
しかししばしばアルツハイマー型と誤診されることがあります。

症状としては物忘れをしたり、幻をみたりします。
症状に変動性があり症状が出るときと出ないときがはっきりしています。
歩きにくかったり転びやすかったりする歩行障害、手が不器用になったり動きが遅くなったりするパーキンソン症状が現れます。
薬の副作用も現れやすいです。

脳の前の方で起きる病気として「前頭側頭型認知症」があります。
この病気は比較的まれなもので、認知症の中でもあまり発症している人がいません。
一番多い認知症のアルツハイマー型に比べて、若い世代で発症しやすいのが特徴です。
認知症の症状として多い健忘症よりも人格変化の方が顕著に現れる症状です。
自己中心的になったり、短絡的に行動したりするようになります。
物事に対して意欲が低下して何事もめんどうになってしまいます。
そのため行動すべてにおいてだらしなくなってきます。
食事の嗜好も変わってきて、偏食や過食を起こしがちになります。
物事を繰り返して何度も行う繰り返し行動をするようになります。
言語障害も現れます。


認知症の予防

認知症が発症する危険因子をなくしていくことが、認知症の予防につながります。
認知症の大部分を占めるアルツハイマー型と脳血管性の認知症を予防すればほとんどの認知症を予防できることになります。

まず脳血管性認知症についてです。
脳の血管の中で障害が起こることによって引き起こされます。
脳の血管に影響を与える病気としては、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血、血栓症や脳塞栓症などがあります。
これらの病気の危険因子として考えられることは、肥満や運動不足、飲酒や喫煙などの生活習慣、塩分摂取などです。
よって適度に運動をして肥満体質を改善して、適度な飲酒、適度な塩分摂取を心がけ、喫煙をやめればいいことになります。
高血圧や高脂血症、糖尿病などの病気の人にも発症しやすいため、これらの病気を治すことが認知症を予防することにつながります。

次にアルツハイマー型認知症についてです。
遺伝因子と環境的因子があります。
環境的因子の一つとして食生活を見ていくと、食習慣として1日1回必ず魚を食べるようにしている人の方が発症率は低いことがわかっています。
野菜や果物の摂取を多くしている人も発症率が低いです。
野菜に含まれるビタミンやカロチンなどの効果によるものです。
ワインも赤ワインに含まれているポリフェノールの影響で週1回ワインを飲む人と全く飲まない人では、飲んでいる人の方が発症率は低いことがわかっています。
適度な運動も発症率を下げる効果があり、週に3回以上運動している人はしていない人に比べて認知症の発症率が半分近くも低くなっています。
これらのことを意識して生活していくと、認知症予防に効果があると思われます。


周辺症状

認知症になると必ずみられる症状と、それらの症状がもとで起こる周辺症状に分けられます。
周辺症状は必ずみられるわけではありません。
周辺症状は人によって個人差があります。

周辺症状として「妄想」があります。
勝手に物事を想像して被害妄想を抱いたり、他人や家族に対して一方的に嫉妬妄想を抱いたりすることがあります。
例えば物がなくなって自分が探せないだけで誰かが自分への嫌がらせのために隠したと思い込みます。
これらの妄想被害や嫉妬は身近な存在である家族に対して起こすことが多いです。

次の症状は「幻覚」です。
幻聴と幻視がありますが認知症では幻視の方が多いです。
他の人に見えないものが見えていることが多く見られます。

「不安」症状。
今までできていたようなことができなくなるため、不安に陥ります。
自分が認知症であるという認識を完全に持つことはありません。
しかしながら物忘れなどの障害を認識することはできるため、焦りや不安を感じるようになります。

「依存」症状。
不安によって自分ひとりではできないと逆に他人に依存することが多くなります。
またひとりでいることに不安を感じて落ち着きが無くなり、家族の後をついてくるといった症状がみられます。

「徘徊」症状。
今までわかっていた道などもわからなくなり、次第に迷子になるようになります。
重症化すれば無目的で歩く徘徊が多くなります。

「攻撃的」症状。
本人の行動を注意すると怒ったり、説明をきちんとしないで着替えさせたり入浴させたりすると怒ったりします。

「抵抗」症状。
介護されることに対して抵抗する人が多いようです。
特に入浴を介助されることに一番抵抗が強いようです。

「抑うつ」症状。
何をするにも意欲がなく、考えることも遅くなるといったうつ状態に似た症状がでます。

「異食」症状。
石鹸やティッシュなど普段口に入れないようなものを入れて食べようとします。


せん妄との違い

「せん妄」とは、急性脳障害によって一時的になる軽い意識障害です。
意識混濁状態になり理解力や判断力がなくなって、妄想や幻覚症状が現れて興奮状態になります。
アルツハイマー型の認知症ではこのせん妄症状が現れることがあります。
しかしせん妄の人と認知症の人では違いがあります。
せん妄の人の場合、一日の中でもその症状の出方に違いがあって変化が激しいです。
せん妄の人は物事をしっかりと理解して頭がはっきりとした状態のときと、そうではない状態のときがあります。

基本症状を比べてみると、せん妄の場合は意識障害、幻覚や運動障害がしばしば見られます。
認知症では、記憶障害と認知障害が見られます。
発症の出方を比べてみると、せん妄の場合は急激に発症しますが、認知症の場合は段階を踏んで徐々に症状がでてきます。
動揺性を比べてみると、せん妄では同様が頻繁で特に夜間に悪化しますが、認知症では少しだけでほとんどありません。
これらの症状はせん妄では数日から数週間持続するだけなのに対して、認知症では永久的に持続します。
睡眠障害については、せん妄では覚醒リズム障害があるのに対して、認知症ではほとんどありません。
せん妄は薬や環境の影響によって発症することがありますが、認知症では薬も環境も関係ありません。

一見間違われそうなせん妄と認知症ですがこのような症状の違いがあります。
認知症だと思い込むのではなく、症状がみられたら専門医の診断を受けるようにして適切な治療を受けましょう。


うつとの違い

せん妄以外にも認知症と間違われやすいのが「うつ状態」です。
うつ状態とは、心がふさいで気分が落ち込んで全てのことにやる気が起こらなくて憂鬱な状態のことです。
思考能力も低下して、物事をあまり考えられなくなります。

基本症状としては、うつでは抑うつ症状や心気的症状がみられます。
認知症では、記憶障害や認知力が低下します。
感情で比較すると、うつでは抑うつ気分を持続しているのに対して、認知症では表面的に感情が現れて、動揺性もあります。
記憶や認知に関しては、認知症の典型的な症状といえますが、うつではほとんどみられない症状です。
言語にも認知症は影響を与えて言語障害が会話に支障をきたすほど現れますが、うつでは言語障害はみられません。
人との会話に対しては、うつではただ反応が鈍くなったり「わからない」と答えたりするだけなのに対して、認知症では怒ったり、言い訳をしたり、作り話をしたり、答えなかったりします。
これらの感情はうつでは、数時間から数週間持続しているだけですが、認知症では永久的に持続しています。
さらにうつ状態の典型的な感情として、自殺願望がありますが、認知症には自殺願望はあらわれません。

このようにしてうつ状態と認知症ではあきらかに症状に違いがあります。
うつの場合は抗うつ剤などの投与によって症状がいくらか改善されます。
いずれにしてもこれらの症状があらわれたらすぐに医療機関を受診してください。
一瞬だけですぐに症状がなくなったとしても、必ず専門医に診せて検査をしてもらいましょう。


病院

病院を受診するときはあらかじめ医者からの問診に答えられるようにある程度答えを考えておくことが必要です。
認知症診断では日頃の様子を患者自身や家族から問診します。
この情報が診断に大きく影響があります。
いつ頃からどのような症状がでたのか、症状が気になりだしたころからノートなどに日にちと症状をつけておくと病院に行った時に困らなくてすみます。
突然病院で聞かれて焦って答えられないと困りますから事前に準備しておきましょう。

よく問診で聞かれることとして、いつ頃から症状がでているのかその時期とどのような症状だったのかを聞かれます。
他にも現在も続いている症状にはどのようなものがあるのか。
現在困っていること、かかっている病気はなにか。
今までにかかったことのある大きな病気はあるか。
現在服用している薬はあるか。
常用している薬がある場合は、薬の添付文書あるいは薬を持って行き医者に見せましょう。
本人が答えられないものは家族がしっかりと日頃の様子を伝えるようにしてください。

他にはCTやMRI検査をして脳を調べたり、血液検査や尿検査をして体調をチェックしたりします。
腱反射検査などで運動機能や神経系のチェックも行います。
何らかの病気が認知症に影響を与えていることも考えられるため病気を持っていないかチェックします。
病院によっては記憶テストを行って記憶障害や認知障害の具合をみることもあります。
問診結果とこれらのテストの結果、検査結果を総合して医者は認知症の診断を下します。


心理療法

患者さんごとに認知症の症状も違いがあります。
そのためその人に合ったケアをしていくことが認知症治療の上で最も大切なことです。
精神的にケアすることと、日常生活をケアすることなど必要となるケア内容も人によって違います。

他にも専門医による心理療法も大切な治療方法です。
精神科の医者や理学療法士などの各種療法士が行います。
治療方法としては、本人の過去の話を聞いて過去を回想させて自分の人生振り返ることで自己認識をさせる「回想法」があります。
他にも赤ちゃんや子どもなどの違う年代の人と触れ合うことで周囲に関心をもたせるように行う「リアリティーオリエンテーション」があります。
音楽が好きな人には音楽療法で、音楽を通じて過去を思い出させます。
動物好きな人には、動物と触れ合うことで周囲への関心をもたせるようにします。

さらにリハビリ治療も認知症の有効な手段です。
脳血管性認知症などの場合、麻痺がでたり運動機能に障害がでたりすることがあります。
そのため体の機能が低下して寝たきりにならないように予防するためにも、リハビリは大切な治療方法なのです。
また体の機能が低下して、自ら活動する機会が減ったり、自発的に何かをしようとする気持ちがなくなったりすることで認知症の症状が進行してしまうことがあります。
この症状進行を防ぐためにもリハビリは大切な治療手段です。

これらの治療方法を全て試せばいいわけではありません。
最初にも言いましたようにその人の症状や環境などに合った方法を選ぶことが大切です。


アリセプト

認知症に効果を発揮する薬はどんなものがあるのでしょうか。
今現在認知症を根本から治す薬はありません。
しかしアルツハイマー型認知症の初期状態では薬を飲めば認知症の進行を止めることができる薬があります。
それは「アリセプト」です。
根本的な治療薬ではなく、あくまでも対処療法で症状の進行を止めて認知症が悪化しないようにするものです。

「アリセプト」はアルツハイマー型の認知症治療薬です。
脳の中のアセチルコリンという物質の量を増やして、アルツハイマー型認知症や記憶障害の症状改善をします。
アルツハイマー型認知症の患者さんに進行の抑制や症状改善を期待して使われる薬です。

主成分はドネペジル塩酸塩です。
エーザイから発売されている薬です。
錠剤と細粒、水なしで飲める錠剤があります。

ただし不整脈や気管支喘息や消化性潰瘍などの持病がある人の脳にアセチルコリンが増えると病気を悪化させてしまうため服用はできません。
副作用としては吐き気や嘔吐、発汗やよだれ、心不全や急性腎不全、肝炎や肝障害などを起こすことがあります。
ごくまれに悪性症候群が現れます。
このアリセプトでは、アスピリンや非ステロイド性の消炎鎮痛薬や抗コリン系の薬など併用してはいけないものが多数あります。
服用の際には必ず医者に現在飲んでいる薬を伝えて指示に従うようにしてください。
認知症患者本人に薬の管理はさせないようにくれぐれも気をつけてください。
必ず家族や周囲の人間が管理して服用させるようにしてください。


水頭症

手術することで治せる認知症があります。
それが「特発性正常圧水頭症」です。

水頭症には2つの種類があります。
「非交通性水頭症」と「交通性水頭症」です。
非交通性水頭症は脳脊髄液の流れが脳の中のどこかでブロックされてそれにより脳圧が高くなって意識障害や頭痛、嘔吐などの症状がでることです。
交通性水頭症は脳脊髄液の流れが悪くなって、髄液が脳質にたまっていくことでゆっくりと症状が現れるものです。
脳圧も高くなるとは限らないので見つけにくく、そのうち歩行障害や認知症などの症状を起こします。
「特発性正常圧水頭症」はこの交通性水頭症の仲間です。

くも膜下出血などの病気の後に髄液の流れが悪くなり起こりやすいものが「続発性正常圧水頭症」。
これに対して原因が特に特定できずに次第に脳室が拡大して髄液が少しずつ貯まって行くことで発症するのが「特発性正常圧水頭症」です。
この特発性正常圧水頭症の3大徴候としては、歩行障害や認知症そして尿失禁があります。
この症状がでてそのまま放置すると3ヶ月程度で寝たきりになってしまいます。
特発性正常圧水頭症は60歳代後半~70歳代にかけて一番かかりやすいです。

特発性正常圧水頭症は手術をすることである程度治すことができます。
「シャント術」というもので、流れの悪くなった髄液の流れをよくするための手術です。
体内にシリコン製のチューブを埋め込むことで髄液の流れをよくします。
髄液を流すベストな量は個人ごとに違うため微妙な調整が必要となります。
症状の中で特に歩行障害に対して絶大な改善効果を発揮します。


若年性認知症

最近では若者が認知症になることは珍しくありません。
認知症は高齢者だけの病気ではないのです。
若年性認知症とは18歳~64歳の人がかかる認知症のことです。

高齢者がかかる老人性認知症の場合、主な原因としてはアルツハイマー病や脳血管性障害などが挙げられます。
これに対して若年性認知症の場合は、アルツハイマー病や脳血管性障害の他にも脳腫瘍による後遺症や外部外傷によるもの、薬物依存やアルコール依存によるもの。
パーキンソン病やヤコブ病、エイズ、ピック病など多くの病気によってもたらさせるものです。

50歳~60歳代の男性に多いのが脳梗塞によって血管が詰まり血流量が減って脳細胞の働きが悪くなることで認知症を発症することがあります。
高血圧や脳卒中をした経験がある人は要注意です。
運動機能の低下や言語障害などを感じたらすぐに医療機関を受診してください。

人格に突然変異が生じるのがピック病です。
20歳の若さで発病することもあります。
家族に同じ病気の人がいる場合は要注意です。

若年性認知症の治療方法や対応方法は様々です。
脳血管性障害が原因によるものならば、外科的手術をしたり、薬物治療をしたりします。
アルツハイマー病が原因ならば、早期発見すればリハビリで改善することもできます。
特に若年性の認知症の場合は、生活改善をすることで発病する確立を大きく減らすことができます。
食事を1日3回きちんととる、きちんと睡眠をとる、適度に運動をする、アルコールは適量にする、タバコは控えるなど少し気をつけるだけでも大きく違います。


現在認知症を完全に治す薬はありません。
しかし認知症によって生じる様々な症状に対して作用する薬はいくつかあります。
それは妄想や幻覚、問題行動などに対して抗精神病薬や抗不安薬、代謝改善薬などを用いることです。

例えば抗不安薬として大日本住友製薬の「セディール」があります。
主成分はタンドスピロンクエン酸塩です。
脳の中にあるセロトニンに働きかけて、ストレスなど精神的原因によって起こる自律神経失調症や消化性潰瘍などの症状を和らげます。
不安感やあせり、抑うつ、睡眠障害などの症状を和らげて、神経過敏になっている人の恐怖感も和らげます。

抗精神病薬としてヤンセンファーマの「リスパダール」があります。
主成分はリスペリドンです。
精神的な病に用いる薬で、気持ちを穏やかにしてくれます。
薬の作用としては、高ぶった気持ちや不安感を鎮めて心身の活動を改善してくれます。
また幻覚や幻聴、妄想などを見る人は脳の情報伝達系になんらかの異常を生じています。
この脳の中の情報伝達系を改善してくれる効果もあります。
神経伝達物質であるドーパミン、セロトニンを抑制することによって効果を発揮しています。
錠剤だけではなく、水なしで飲める錠剤、細粒、内服液などがあります。

抗精神病薬としてアステラス製薬の「セロクエル」もあります。
ジベンゾチアゼピン系の薬で、主成分はクエチアピンフマル酸塩です。
脳の中でドーパミン、セロトニンの働きを遮断して、幻覚や幻聴など精神病の症状を和らげてくれます。
服用は少量から初めて様子を見ながら医師と相談して維持量を決めます。
錠剤と細粒があります。


薬その2

抗精神病薬として大日本住友製薬の「ルーラン」があります。
主成分はペロスピロンの塩酸塩水和物です。
認知症や精神病による幻覚や幻視など様々な症状に対して効果を発揮します。
脳の中のドーパミンを遮断して興奮状態を抑え、セロトニンを遮断して無動行動やけいれんを抑えます。
副作用として、手のふるえや筋肉のひきつり、不眠やねむけ、錐体外路症状などの精神症状が一般的にあります。
まひや嚥下困難、けいれん、筋肉障害、悪性症候群などの思い副作用もごくまれにあります。

他にも抗精神病薬として日本イーライリリーの「ジプレキサ」があります。
統合失調症を始めとして認知症やうつなど様々な精神症状に効果があります。
高ぶった気持ちや不安感を鎮めて心身を落ち着かせる作用があります。
脳の中の神経伝達物質であるドーパミン、セロトニン2つの物質を抑制して症状を抑えます。
不安感やうつ状態を軽減してさらに再発予防効果もあります。

抗精神病薬の新薬として大塚製薬の「エビリファイ」があります。
2006年に発売された薬です。
統合失調症を始めとして認知症やうつなど精神病に効果を発揮します。
主成分は「アリピプラゾール」です。
従来の抗精神病薬の進化系で副作用を少なくした薬です。
興奮や不安、緊張状態を和らげて、何に対してもやる気が無く興味を持たないという精神状態を改善します。
神経伝達物質のドーパミンの取り込みが過剰なときはブロックして、逆に不足しているときには補う力がこの薬にはあります。
従来の抗精神病薬の副作用としてあった「ふるえ」や「こわばり」がこの薬には副作用としてないこともポイントです。


認知症ケア専門士

認知症の人のケアを充実させるために、認知症ケア学会が設置した認定試験です。
認知症のケアに対して優れた学識を持ち、高度な技能を持ち、倫理観も持っている専門の技術士を養成するための制度です。
高齢化が進んでいる日本において、認知症のケア技術の向上とは患者本人だけではなく、その家族や周辺の人たちにも大きな意味を持ちます。
認知症の優れたケアの技術向上によって、福祉や保健に貢献する目的で認定制度が始まりました。

受験資格として実際に認知症のケア関係施設にて3年以上の実務経験を持っていることが必要です。
認知症ケア専門士の認定試験では、試験と面接を行います。
1次試験では、次の4分野があります。
認知症ケアの基礎や実際編の総論と各論、認知症ケアの社会資源です。
この4分野全てに合格しなければ2次試験には進めません。
4つをまとめて合格しなくても大丈夫です。
各分野の合格猶予は5年間ありますからこの期間のうちに4分野合格する必要があります。
2次試験では、論述試験と面接試験があります。

専門士には生涯学習の義務が課せられます。
認知症ケア専門士の認定試験に合格してもその資格には更新義務があります。
5年ごとに更新しなければならず、学会主催の講座への参加やシンポジウムなどへの参加、研修への参加など生涯学習制度が設けられています。

合格した人の取得している資格は介護福祉士や介護支援専門員、ホームヘルパーさらに看護師や准看護師などの介護に携わっている人がほとんどです。
中には社会福祉士や作業療法士、保健士などもいます。


介護のポイント

いつ自分の周りの大切な人や家族が認知症を発症するかわかりません。
いざそのときがきたらどのように介護していったらいいのか戸惑う人も多いと思います。
認知症の人を介護する際のポイントを紹介します。

介護の一番のポイントは、一人で抱え込まないことです。
家庭で介護する場合家族の負担は想像を絶するものがあります。
何でも一人でやろうとしないでください。
一人で全て抱え込んで介護する側が体調を崩しては何の意味もありません。
出来る限り楽をして介護することが、介護を永くしていくポイントです。

介護を楽にするためには、利用できるものは利用することが一番です。
家族や親戚、近所の人など周囲の人間に協力を依頼してみましょう。
特に徘徊したり迷子になったりする場合は、近所の人の協力が不可欠です。
見かけたら家まで連れて帰ってきてもらうなど依頼しておくと助かります。

近年介護に関するサービスが増えています。
介護サービスや制度を上手に使ってゆとりをもって介護できるようにしましょう。
とにかく介護者が追い詰められないように自分自身のことや自分の家族のことも世話できる余裕が必要です。

介護していると不安や心配なことがいくつもでてきます。
そんなとき誰か相談できる相手がいると精神的な支えになってもらえます。
認知症の検診をしてもらうかかりつけの医者やホームヘルパー、ケアマネージャー、保健婦など誰か相談できる相手を見つけておきましょう。
出来る限り楽をして介護することが一番のポイントです。


施設

認知症の人の世話を自宅で行うには限界があります。
介護者が疲れきってしまい体調を崩すこともあれば、将来を悲観して認知症患者である家族を殺して自分は自殺するという事件も起きています。
このようにならないためにも、外部の施設をうまく利用するといいと思います。
まかせっきりにするのではなく、介護者の生活も普通に行えるレベルで楽に介護ができる範囲で行うのがベストだと思います。

いろいろな施設がありますから紹介していきます。
「介護老人福祉施設」は特別養護老人ホームとも呼ばれています。
この施設では常時介護が必要な人で自宅での生活を行うのが難しいと思う人が入居します。
「介護老人保健施設」は老人保健施設とも呼ばれています。
「介護療養型医療施設」は寝たきり患者や医学的治療が必要な人、看護が必要な人のための施設です。
「ケアハウス」は介護利用型の老人ホームのことです。
軽費老人ホームの1つ、車椅子の人でも安心して暮らせる造りになっています。
「有料老人ホーム」は10人以上の高齢者を入居させる施設です。
日常生活が不自由なく送れるように食事やその他の便宜を提供している施設です。
所在地にある都道府県知事に届け出が必要です。
構造や設備、運営などに関してすべてガイドラインが設けられています。
このガイドラインをクリアしている施設には低金利融資制度を利用することができます。

それぞれの認知症の症状の度合い、介護者の状態、生活環境などで判断して一番いいと思う施設を選びましょう。


介護サービス

施設に入るだけが介護ではありません。
認知症になったとしても大切な家族と自宅で生活をしたいという人も多いと思います。
そのようなときは自宅で介護をしながら、外部の訪問サービスなどを利用して少しでも介護者が楽になるように工夫することが介護を永く続ける上で大切なことです。

「ホームヘルパーサービス」こと訪問介護は、ホームヘルパーが自宅にきて、食事や排泄、入浴などの介護をしたり、身の回り全般のお世話をしたりします。
「訪問入浴介護」サービスは、寝たきりや手足が不自由で自宅のお風呂では入浴が困難な人に対して、介護用の浴槽を提供して、入浴をさせてくれるものです。
認知症患者を介護者一人でお風呂に入れることは大変な労力が要ります。
このようなサービスを利用すると介護負担をかなり軽減することができます。
「訪問リハビリテーション」サービスもあります。
自宅に理学療法士や作業療法士がきてリハビリを行ってくれます。
最近急激に増えてきた「デイサービス」では、日帰りで介護施設を利用することができます。
自宅まで送迎してくれて、食事や入浴などのサービスを受けます。
「ショートステイ」サービスは、家族や介護者が一時的に都合の悪いときに短期間だけ施設に入居することです。
「認知症高齢者のグループホーム」とは、居宅サービスのひとつで一般的にグループホームと呼ばれています。
比較的元気な認知症高齢者の5人~9人くらいを小さな施設や住宅などに集めて一緒に生活をします。


接し方

認知症患者と接するときにはいくつか気をつけなければならないことがあります。
認知症の症状は患者ごとに違うため、接する側もそれぞれに合わせて対応しなければなりません。
認知症の人との接し方には原則があります。
一番大切なことは相手の自尊心を尊重することにあります。
頭ごなしに怒ったり決めつけたり、否定したりすると自尊心が傷つけられてしまいます。

例えば認知症の人が自分の物が盗られたとか、現実には見えていないものが見えたなど事実を誤って理解して現実を違う行動をとった場合でも、まずは逆らわないことです。
決して相手を否定してはいけません。
この場合はまずは相手の話に合わせて、話題をかえたり場面をかえたりして関心を他にそらします。

認知症の人は自分の物が他人に盗られたとすぐに疑うことをします。
その場合すぐ身近にいる家族が疑われます。
疑われたからといって興奮して怒らないで下さい。
一緒に探そうと促して行動を起こすか、お茶を飲ませるなどして感心を他にそらせるなどの方法をとります。

他にも認知症の人が失禁や不潔行為や徘徊など失敗行動をした場合、絶対に怒ってはいけません。
「だめだ」とか「いけない」などは禁句です。
説得することもだめです。
この場合は認知症の人の行動を考えて失敗しないように環境を整えてあげたり、気持ちを満たしてあげたりすることが大切です。
全てにおいて認知症の患者である本人が一番困っているのだと理解してあげることが大切です。


徘徊

道に迷ったり、あてもないのに歩き回ったりする徘徊は認知症の主な症状です。
徘徊は知らないうちにいなくなってしまっていることが多く、また認知症を患っているためたいした目的も無く歩き回るのでいる場所を特定するのも難しく探すのが大変です。
家族にとってはいつ事故にあうのか、いつ行方不明になってしまうのかと心配でなりません。
しかし認知症の人でも徘徊する理由をちゃんと持っているのです。
なぜ徘徊するのか理由や欲求を冷静に考えてみることが大切です。
決して頭ごなしに「外にでてはだめ!」「家に入って!」などと言わないで下さい。

例えば徘徊する状況を見てみると、いつも同じ場所にいって必ず迷子になるとか、行きなれない場所のときに迷子になるとか、公園や喫茶店や実家、昔の職場など公共の場に行きたがる。
他にも興奮すると出て行ってしまうとか、家を留守にして家族が誰もいなくなると徘徊してしまうなどそれぞれ状況が決まっていると思います。

このような場合、行きたい場所があるならば時間を決めて一緒についていってあげて欲求を満たしてあげるとか、出かけられないときは他ごとに関心を持たせて気をそらせるようにする。
あるいは玄関に貼り紙をして勝手にでていかないように注意を呼びかけるなどそれぞれ対応方法があると思います。
どうしてもやむを得ないときは、玄関に鍵をかけて出られないようにしますが、この際狭い空間に閉じ込めるのではなく、自由に行動できるように広い空間を確保してあげてください。
それでも勝手に外出してしまって困る場合は、玄関の扉を開けたらチャイムが鳴るようにセットしておくなどの対策を施すしかありません。
外出するところを見かけたら後ろからついて歩いて行くといいです。
普段立ち寄っているところとか、近所での苦情や様子などを知ることができます。
日頃から徘徊する癖がある人には、名札などを衣類に縫い付けておくと見つけた人が知らせてくれることもあると思います。


失禁

介護者の負担になる大きなものとしておもらし「失禁」があります。
認知症の人で失禁する人には、それなりの理由があります。
まずはその原因を探ってそれによって対応方法を考えなければなりません。
してはいけないこと、それは絶対に失禁したことを怒ってはいけません。
認知症の人は知能が低下していても、自尊心は高いので怒ると逆効果です。

介護者が考えなければすることは3つ。
怒らない、原因を探る、失禁しない方法を考えることです。

例えば部屋の隅にいっておもらしする人、お風呂でする人、ゴミ箱にする人などそれぞれあると思います。
この場合認知症の本人はそこをトイレと勘違いしている可能性が高いです。
ですからトイレに「トイレ」とか「便所」などわかりやすく表示しておくといいと思います。
それでもトイレがどこにあるのか認知できない場合は、おもらしする場所にトイレの変わりになるような容器を置いておくしかありません。

何よりもおもらしさせないようにするには、適度なタイミングでトイレに連れて行くことが失敗を未然に防ぐ方法です。
食事の後や飲み物をたくさん飲んだ後、眠る前や外出前など一日のトイレのタイミングは数日見ていればわかると思います。

「ここはトイレではないのよ」「こんなところにしないで」「しっかりして」など決して頭ごなしに怒らないようにしてください。

どうしてもおもらししてしまって介護者が大変な場合は、おむつを使うとかおむつ組み入れパンツなどを使いましょう。
おむつを嫌がる場合は、抵抗無く使えるようにパンツのようなT字帯式などを使ってみてください。


入浴

認知症も進行してくると、石鹸などの異物を食べたり、ちょっとした段差で転倒しやすくなったりします。
そのため認知症の人をひとりで入浴させることは大変危険なため、介護者のお世話が必要になります。
介護者一人で大人一人を入浴させることは大変困難で重労働です。
認知症が進行して体が不自由になり入浴させることがあまりに困難になった場合は、デイサービスなど外部サービスを利用するようにしましょう。

入浴を嫌がるような場合は、お風呂から出たらジュースを飲もうとかビールを飲もう、ご飯を食べようなど何か楽しみを見つけてあげるといいです。
あるいは孫と一緒に入るなど誰かと入るのも楽しみになると思います。

まだ自宅で入浴が可能な段階においてのお世話の仕方を説明します。
まず入浴前には必ずトイレに行かせましょう。
あらかじめお風呂の温度を確認して、浴室内も温めておきます。
浴室内は滑りやすいため転倒防止のためにもゴムマットなどを敷いておくといいです。
でてきてから着る衣類も用意しておきます。
着る順番に衣類を重ねておきます。
脱いだ服は入浴している間に介護者が片付けておきます。
このとき失禁していないか下着のチェックをしておきます。

浴室に一緒に入って、背中など洗いにくい部分の体を洗ってあげましょう。
洗いながら体に異常がないかも見ておきます。
洗髪もひとりでは難しいため、介護者がやってあげましょう。

お風呂に入ってあまりの気持ちよさに出たくないという場合もあります。
この場合もお風呂から出たら何か楽しみがあるように、出たらご飯を食べようとかビールを飲もうなどと誘ってみましょう。

このように日常生活において私達が当たり前に行っている全てのことに対して介助がいるようになります。
介護者の負担は相当なものです。
誰か一人に任せるのではなく、家族全員で一丸となってまた外部サービスもうまく利用しながら上手に介護していくことが大切です。